各界からの
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西岡研介 / Kensuke Nishioka / ノンフィクションライター

新聞、雑誌記者時代、作品のモデルとなった宗教団体をはじめ、いくつかの新興宗教を取材してきた。
時には政治との絡みで、あるいは事件との関係から。ただ、その時に私が見ていたのは、あくまで信者の「集団」であって、「個」ではなかった。
当たり前の話だが、結果的に集団を形づくる個は、各々に生い立ちも違えば、それぞれに異なった苦悩や葛藤、諦念を抱えている。
また、個々によって、集団と保つ距離も違えば、考え方も違う。そして、これも至極当然のことなのだが、それらは歳月を経るごとに変わっていくし、さらには身近で、あるいは社会で起こった様々な出来事に触れることによって、変化もしていく。
しかし、私はそれら「集団」の中の「個」に目を向けようとしなかった。いや、無意識のうちに避けてきた。
なぜなら私にとってそれらは、集団を描く上で正直、厄介で、邪魔な存在だったから。
だが、木村文洋の視点は私のそれとは真逆だ。あくまでそれぞれの個に照射することによって、それらが形成する集団、さらには社会の「今」を浮き上がらせる。
そういう意味で木村の紡いだ本作品は、フィクションの体裁をとった「ドキュメンタリー」と言えるのではないか。