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島田裕巳 / Hiromi Shimada / 宗教学者

親が新宗教の信者というのは、子どもにとっては厄介なことである。
だが、そうしたケースは少なくない。
さらに厄介なのは、両親が信者ではなく、片方だけが信仰していたり、信仰の違いで離別してしまったときだ。
子どもは生涯にわたって、信仰の問題に直面し、悩まなければならなくなる。
親と同じ信仰を持つのか、信仰ということ自体を徹底的に排除するのか。
ずっと冷静ではいられない。おまけに、経験がない人間には、この苦悩は理解してもらえない。
親と子と信仰。これは、三位一体の関係にある。そんな関係が成立してしまうのも、その背景には貧しさがあり、社会の矛盾があるからである。
社会は冷酷で、その矛盾を弱者に押し付けてくる。弱者は居場所を失って、新宗教に逃げ場を求める。
この映画に登場する「南無妙法蓮華経」の題目は、そして、題目を唱え続ける人々が作った組織は、果たして、そうした矛盾から人を救い出してくれるのだろうか。
それは、映画が提起する重要な課題だ。